特例容積率適用地区

📄目次
 
特例容積率適用地区とは
不動産用語の中に「特例容積率適用地区」という言葉があるのをご存じですか。
不動産業務の専門家でなければ、この用語についてはなかなか耳にする機会もないと思われます。
ここでは、特例容積率適用地区とはどのような地区を指して言うのか?また、どのような制度なのかについて解説します。
不動産用語を理解する上での参考にしてください。
 
1.特例容積率適用地区について
特例容積率適用地区は、都市計画で指定された区域内において、建築敷地の容積率の一部を複数の 建築敷地間で移転できる地区のことをいいます。
つまり、ある建築敷地で未使用となっている容積率を、その他の関係のない敷地にある建築物に移転して、土地の高度で効率的な利用を促進するために設けられたエリアと考えればいいでしょう。
 
2.特例容積率適用地区制度の利用
特例容積率適用地区制度を利用することで、次のようなことが可能になります。
2-1.容積率の移転
都市計画で指定された区域内であれば、建築敷地の指定容積率の余剰分を複数の建築敷地間 で移転することが可能です。
2-2.移転のための特例
原則的に容積率の移転は隣接する敷地の間でしか認められませんが、この制度を利用すると、隣接していない建築敷地間でも移転が認められます。
2-3.空中権の売買が可能
余剰容積率の売買を「空中権の売買」と言いますが、指定された適用地区内であれば空中権の売買が可能です。
2-4.建築物の制限
特例容積率適用地区においては建築物の高さには制限があります。
たとえば余剰容積率を他の建築物に転嫁する場合には、適用地区において建築物の高さの制限が定められますが、建立する建築物の高さは、当該最高限度以下でなければなりません。
2-5.特例敷地の対象外
特例容積率適用地区は、都市計画でその範囲が定められていますが、容積率移転の適用は土地所有 権利者からの申請に基づいて、特定行政庁が指定します。
この場合、土地所有権者の2つ以上の敷地を「特例敷地」といいます。
しかし、未使用の容積率が残る土地であっても、道路や線路、公園などは特例敷地の対象外です。
2-6.容積率の移転に当たっては
容積率の移転は独断ではできません。移転に当たっては特定行政庁(都道府県知事・市町村の長)に申請して審査を受けなければなりません。
特定行政庁は、建築基準行政において建築主事を置いている市町村では当該市町村の長を、置いて いない市町村では都道府県知事をいいます。
 
3.特例容積率適用地区制度の適用例
特例容積率適用地区の制度を使った適用例は、現在まで、きわめてまれです。
この制度の適用例としては、東京都「大手町・丸の内・有楽町」の再開発があります。
JR東日本は2002年、この制度を活用して東京駅の赤レンガ駅舎の残余容積率を周辺の複数の ビルに移転(空中権を売買)し、駅舎の復元・保全のための資金調達を行っています。
 
4.将来の展望
特例容積率適用地区の制度利用の実例はきわめて少ないのが実情です。
しかし、東京、大阪など大都市部に所在する歴史建造物の多くが、これまで許容された容積率を使い切っていないものがほとんどです。
このように見てみると、大都市部における歴史建造物である寺院や神社は、今後も同じように施設を高層なものにするとはとても考えられません。
そうなると、大都市部における寺院や神社では将来にわたって余剰容積が残ったままです。
そこで、今後は、東京駅の空中権売買に見られるように、未使用のままで残っている容積率を他の敷地に上乗せして、土地を有効活用し都市部の再開発を図ろうとする動きが活性化するものと思われます。
まとめ
特例容積率適用地区とは、どのようなものかについて簡単に解説してきましたがお分かりいただけましたか。
都市部での再開発地区などで、今後は特例容積率適用地区は今後は増えてくるものと思われます。
私たちの暮らしに必要な不動産用語に少しでも理解を深めてほしいものです。