弁済業務保証金

不動産取引の不履行に備えた弁済業務保証金とは

ご存じのように不動産取引においては、売主と買主の間で大きなお金が動きます。
買主が不動産会社(以下、宅建業者という。)で、売主が一般の顧客である場合を考えてみましょう。
ここで不測の事態が起き、買主である宅建業者の経営が行き詰まって、倒産でもしてしまったら売主への支払いが滞ってしまうかもしれません。
そこで宅建業者に代わって、売却金の肩代わりをするのが「営業保証金」であり「弁済業務保証金」による保証制度なのです。
宅建業法では、このように不測の事態に備えた2つの保証制度を定めています。
ここでは前段では2つの保証制度について触れ、後段では弁済業務保証金の中心的な役割を担う「保証協会」について解説します。

1.保証制度には2つがある

冒頭でも述べましたが、不動産取引における保証制度には、営業保証金と弁済業務保証金の2つの制度があります。
不動産業を営む企業や個人である宅建業者はは、業務を開始する際には、いずれかの保証制度に加入しなければなりません。業務を開始するための手付金と考えればよいでしょう。
宅建業者が保証制度に加入していることで顧客となる者は安心して不動産取引ができるのです。
しかし、この2つの保証制度には、性格上、大きな違いがあります。
これから、この2つの保証制度の違いについて見てみましょう。

2.営業保証金と弁済業務保証金の違いについて

まず、大きな性格上の違いは、営業保証金は宅建業者の単独の保証制度です。
弁済業務保証金は、保証協会が保証する団体の保証制度です。
この2つの制度の特徴には次のような違いがあります。

2-1.営業保証金

宅建業者は業務を開始するにあたって、保証制度に単独で加入する場合には供託所へ営業保証金を納付しなければなりません。
供託された保証金を基に、宅建業者との取引で債務不履行などにより損害を被った顧客に対して、供託所に宅建業者が個人で納付した営業保証金から還付が行われます。
納付する営業保証金は、本店のみで営業する場合は1,000万円です。
本店のほかに支店を置く場合には、支店一店当たり、500万円ですが、支店の数ごとに500万円の納付が必要です。
営業保証金の納付に当たっては、現金の他に国債や地方債など有価証券での納付も可能です。
顧客が宅建業者との不動産取引で被った被害により営業保証金の還付を受ける場合は、顧客が直接、供託所へ請求を行います。

2-2.弁済業務保証金

宅建業者は、業務を開始するに当たって、宅建業者が加入する保証協会(宅建業者団体という。)に弁済業務保証金分担金を納付します。
宅建業者より納付された分担金は、保証協会より供託所に納付されます。
宅建業者が保証協会に納付する弁済業務保証金分担金は、本店のみで営業する場合は、60万円ですが、支店を置く場合は、支店一店当たり、30万円です。支店が増えるごとに積み増しが必要です。
宅建業者が弁済業務保証金分担金を保証協会に納付する場合は、金銭のみが可能です。国債や地方債などの有価証券では納付できません。
顧客が宅建業者との不動産取引で被った被害により弁済業務保証金の還付を受ける場合は、顧客が保証協会へ還付を受けるための認証の申し出を行い、保証協会が認証した旨を供託所に通知後に還付を受けるための申請を供託所に行った後、還付が行われます。

3.保証協会について

保証協会についても簡単に触れておきます。
保証協会は、宅建業者が連帯で構成する保証制度のための団体です。

3-1.加入

宅建業者は、弁済業務保証金制度を利用する場合には、保証協会に加入しなければなりません。
保証協会は「全国宅地建物取引業保証協会」と「不動産保証協会」の2つの公益社団法人がありますが、宅建業者はいずれかの保証協会に加入しなければなりません。
注意したいのは、両方の保証協会に同時に加入はできないことです。必ず1つの保証協会に加入しなければなりません。
保証協会に加入した宅建業者は「社員」と呼ばれます。

3-2.保証協会の業務

保証協会の大きな仕事は、宅建業者と債権者となる顧客との間で生じた弁済業務ですが、次のような業務も行います。
1)契約の不履行に伴う苦情の処理
2)宅建取引士などに行う教育・研修及び費用等の助成
3)弁済業務保証金分担金等の保管
4)宅地建物取引業の健全な育成・発展を図るために必要な業務

まとめ

今回は、宅建業者と顧客の間で発生した不動産取引の不履行で生じる損害の保証制度を解説してきました。
営業保証金と弁済業務保証金による二つの保証制度は、健全な不動産取引と宅建業法の目的である顧客の保護を目的に作られたものです。
不動産取引でトラブルに巻き込まれないためにも2つの制度をよく理解しておきましょう。