土地収用法とは

土地収用法とは

土地の収用とは、公共事業で使うために土地の所有権などを強制的に取得することを言います。土地収用法は、一定の公共事業を遂行するために必要な土地を収用するための要件、手続き、効果、損失の補償等について定め、公共の利益の増進と私有財産との調整を図る法律です(土地収用法第1条)。

土地収用をすることができる事業

土地を収用することができる事業は「公共の利益となる事業」に限られています。事業の種類も法3条各号に関する事業に限られています。 たとえば、道路法による道路や駐車場法による路外駐車場、河川法が適用される河川、ガス事業法によるガス工作物、水道法による水道事業、消防法によって設置する消防の用に供する施設などに関する事業である必要があります。

土地収用法の対象物

土地収用法では、土地以外にも収用できるものがあります。たとえば、土地に関する所有権以外の権利、鉱業権、温泉利用権、漁業権、立木・建物その他の土地定着物件などです。

土地収用に関する当事者

起業者

「土地、土地に関する所有権以外の権利、立木・建物その他土地に定着する物件を収用する事業を行う者」のことを言います(法第8条1項)。起業者が土地の収用を行うことになります。たとえば、国や地方公共団体がこれにあたります。

土地所有者

「収用に係る土地の所有者」のことを言います(同2項)。この土地所有者が土地を収用される人となります。なお、土地収用の目的物は土地であるため、建物の所有者はここに含まれません。

関係人

土地を収用する場合に当該土地に抵当権、賃貸借による権利などの所有権以外の権利を有する者、及びその土地にある物件に関して所有権その他の権利を有する者などのことを言います(同3項)。たとえば、土地上に建物を有する土地の賃借人、土地に抵当権を有する銀行などがこれにあたります。

事業認定手続

手続きの流れ

起業者は事前説明会を開催した後、事業認定の申請をします。起業地の存する市町村で2週間ほど申請書の公告・縦覧をします。その後、事業認定庁が公聴会を開催します。そして、事業認定庁から第三者機関に対して意見聴取を行います。最後に事業認定庁が事業認定の告示をするという流れになります。事業認定の審査は事業認定庁により行われます。

事業認定に必要な書類

事業認定が認められるために必要な書類としては、事業認定申請書及び添付書類です(法第18条)。添付書類としては、事業計画書、起業地及び事業計画を表示する図面などがあります。

事業認定の要件

事業認定が認められるために次の要件を満たす必要があります(法第20条)。  ①事業が土地収用することができる事業に関するものであること  ②起業者が事業を遂行するための十分な意思と能力を有すること  ③事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること  ④土地を収用する公益上の必要があること

収用裁決手続

起業者は土地調書・物件調書の作成および裁決申請書・明渡裁決の申立書の作成をします。そして、起業者から収用委員会へ裁決の申請・明渡裁決の申立てをします。その後、起業地の存する市町村で2週間ほど裁決申請書・明渡裁決の申立書の縦覧が行われます。収用委員会の審理があった後、収用委員会から起業者・土地所有者等へ権利取得裁決・明渡裁決がなされます。
その後、起業者から土地所有者等へ補償金の払渡し・供託がなされます。そして、土地所有者等から起業者へ権利取得・明渡が行われます。その際、都道府県知事による代執行または市町村長による代行となります。

補償金の支払請求

土地所有者または関係人は事業認定の告示があった後であれば、収用裁決前であっても、起業者に対し、土地または土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の支払いを請求することができます(法第46条の2第1項)。ただし、補償金の支払い請求は土地収用裁決の申請の請求と併せて行う必要があります(同2項)。
起業者は土地所有者らから補償金の支払い請求を受けたときは、2か月以内に見積もりによる補償金を支払わなければなりません(法第46条の4)。