重要土地等調査法

重要土地等調査法とは

自衛隊施設や原発施設、離島などが国の重要な土地調査の対象になっていると聞きますが、いったいどういうことでしょうか?
このような質問をよく耳にしますが、これらの周辺土地がどうして国の監視の対象になっているのでしょうか。
今回は、このような監視区域が「重要土地等調査」の対象になっているかについて簡単に説明します。
この法律は、土地等の売買契約時においても重要説明事項になりますから注意が必要です。

1.重要土地等調査法とは

この法律の正式名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「重要土地等調査法」といいます。)です。
法律が施行されたのは2022年(令和4年9月20日)と比較的に新しい法律です。
この法律は、国内の重要防護施設や国境沿いの離島の機能を阻害する行為に供される恐れのある施設周辺及び離島の重要土地を指定し、政府がいつでも調査や規制等の措置が講じることができる点にあります。
このように重要土地等調査法の最大の特徴は、わが国の防衛上、最も重要な施設の周辺の土地を、機能を害する目的で利用されることを防ぐ法律ということです。
なお、この法律の所轄省庁は内閣府です。

2.注視区域と特別注視区域

前述したように、わが国の防衛上、重要な施設等は、自衛隊施設、米軍基地、原発施設、海上保安庁施設や国境沿いの離島があります。
さらにこれを「注視区域」と「特別注視区域」に分類します。

2-1.注視区域

注視区域は、防衛上重要な施設、たとえば自衛隊施設や原発施設などその敷地から1,000mの範囲内で指定された区域及び領海防衛上特に重要な国境沿いの離島が指定されます。
離島に含まれるのは、五島、対馬、久米島,宮古島、石垣島などがあります。

2-2.特別注視区域

特別注視区域は、わが国の防衛上重要な施設、たとえば航空基地、隊司令部機能や警戒監視などの任務に供されるその他、自衛隊基地、レーダーサイトや原発施設、海上保安庁施設などが指定されます。
また離島においては、これらの自衛隊の監視・情報の任務に供されるレーダーサイトなどの施設が指定されます。
特別注視区域は、注視区域の中から特に重要な区域から指定されます。
注視区域、特別注視区域の指定状況や区域図は内閣府のホームページ上で確認できます。

3.法律で具体的に定めているもの

重要土地等調査法で定める具体的なものは、次のような土地利用のための行為や規制です。

3-1.土地等の調査

注視区域や特別注視区域では、土地所有の現況調査を行うために、不動産登記簿や住民基本台帳から土地及び建物の所有者、賃貸借人、不動産の利用状況について調査が行われます。

3-2.土地等の利用規制

土地等の調査結果に基づいて、自衛隊施設等の機能を阻害するような利用があった場合は、中止勧告、停止命令等が行われます。
中止勧告や停止命令等の対象となるのは、航空機の離発着やレーダーなどへの妨害のための支障物の配置や妨害電波の発射行為などが含まれます。

3-3.土地等売買時の届け出

重要土地等調査法では、特別注視区域内の200㎡以上の土地や床面積200㎡以上の建物の売買においては、契約締結時から2週間以内に売主、買主の双方が内閣府に届け出なければなりません。

3-4.国による買取

土地等の調査において、国が土地等の適切な管理を行う必要がある場合には、国による直接の買取が行われることがあります。

3-5.罰則

注視区域、特別注視区域内での中止勧告や停止命令に従わない場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます。
また、特別注視区域内で、届け出が必要なのに届け出を怠って売買契約を行った場合や虚偽の届け出を行った場合は、6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。

まとめ

重要土地等調査法について簡単に説明しましたがお分かりいただけましたか。
特別注視区域のように自衛隊施設等の近辺に土地等を所有するケースはまれかもしれません。
しかし、実現性がないわけではありません。
その場合は、国による調査や規制が行われることをよく理解しておきましょう。