土砂災害防止対策推進法
土砂災害防止対策推進法とは
土砂災害防止対策推進法の正式名称は、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」です。
この法律は、土砂災害が発生する恐れのある土地の区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るものです。また、著しい土砂災害が発生する恐れのある区域において一定の開発行為を制限し、建築物の構造の規制に関する所要の措置を定めるほか、土砂災害の急迫した危険がある場合において避難に資する情報を提供すること等により、土砂災害の防止のための対策の推進を図っています。そして、土砂災害から国民の生命及び身体を保護し、公共の福祉の確保に資することを目的としています。
土砂災害とは、急傾斜地の崩壊(傾斜度が30度以上である土地が崩壊する自然現象)、土石流もしくは地すべりまたは河道閉塞による湛水(土石等が河道を閉塞したことによって水がたまる自然現象)を発生原因として国民の生命又は身体に生ずる被害のことを言います。
基礎調査
基礎調査とは
基礎調査とは、渓流や斜面など土砂災害により被害を受ける恐れのある区域の地形、地質、土地利用状況など土砂災害警戒区域の指定及び土砂災害防止対策に必要な調査のことを言います。
都道府県は、基本方針に基づき、急傾斜地の崩壊等の恐れがある土地に関する地形等に関する調査を行います。そして、都道府県は、基礎調査の結果を関係のある市町村長に通知するとともに公表しなければなりません。
基礎調査のための土地の立入り等
都道府県知事等は、基礎調査のためにやむを得ない必要があるときは、その必要な限度において、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用することができます。したがって、周辺住民は通知を受けたときは、基礎調査に必要な限度において土地の立ち入りや一時使用をされることになります。
もっとも、日出前及び日没後は立ち入りが禁止されています。そして、一時使用についてはあらかじめ意見聴取の機会があります。さらに、立ち入り又は一時使用により損失を受けた場合は、損失補償をしてもらえます。
土砂災害警戒区域について
土砂災害警戒区域の指定
都道府県知事は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には、住民等の生命又は身体に危害が生ずる恐れがあると認められる土地の区域を土砂災害警戒区域として指定することができます。指定をする場合はあらかじめ関係のある市町村長の意見を聴取します。
危険の周知や警戒避難体制の整備
土砂災害警戒区域内では、危険の周知や警戒避難体制の整備が行われます。具体的には、市町村地域防災計画への記載、災害時要援護者関連施設の警戒避難体制の整備、土砂災害ハザードマップによる周知の徹底、宅地建物取引における措置などがあります。
宅地建物取引における措置として、宅地建物取引業者は、当該宅地又は建物の売買等にあたり、警戒区域内である旨についての重要事項説明を行うことが義務付けられています。
土砂災害特別警戒区域について
土砂災害特別警戒区域の指定
都道府県知事は、土砂災害警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められる土地の区域を、土砂災害特別警戒区域として指定することができます。
土砂災害特別警戒区域内における制限
当該区域内で、予定される建築物の用途が住宅・社会福祉施設・学校・医療施設等である場合は、原則として都道府県知事の許可を受ける必要があります。予定建築物の用途や敷地の位置の変更にも原則として都道府県知事の許可を要します。また、建築物の構造規制や建築物の移転等の勧告が行われます。
宅地建物取引業者は、特別の開発行為において、都道府県知事の許可を受けなければ、当該宅地の広告宣伝及び売買契約の締結を行うことができません。また、当該宅地又は建物売買等にあたり、特定の開発の許可についての重要事項説明が義務付けられています。