急傾斜地法

急傾斜地法について

私たちの身の回りには危険な崖などが多く点在しています。
急傾斜地と呼ばれる土地もその一つです。
急傾斜地とは斜面角度が30度以上ある土地のことをいい、このように急傾斜である土地は地震や大雨など自然災害が起きた場合には、土中の抵抗力が弱まり、突然、斜面が崩れ落ちて一瞬のうちに人家に大きな被害をもたらす恐れがあります。
そのような危険な個所で起こる災害を未然に防止するために「急傾斜地法」が制定されています。
ここでは、急傾斜地法律について簡単に解説します。

1.急傾斜地法とはどのようなもの

「急傾斜地法」は急傾斜地の崩壊による災害を防止するために1969年(昭和44年)に制定された法律です。
しかし、この法律は、急傾斜地の所有者や利用者の財産(土地・家屋等)の保護が目的ではなく、あくまでその急傾斜地の周辺に居住する人命を保護するものであり、第三者の公益法上の保護を目的に制定された法律です。
急傾斜地法でいう急傾斜地とは、傾斜度が30度以上の土地とされていますが、田・畑・宅地など土地の地目は関係ありません。
また、急傾斜地法で規定された「急傾斜地崩壊危険区域」とは、がけ崩れにより相当数の居住者等に危害の及ぶ急傾斜地とがけ崩れが助長、誘発されないにするために。切土、盛土などの一定の行為を制限する必要のある土地で、都道府県知事が指定した区域をいいます。

2.急傾斜地崩壊危険区域の指定は

急傾斜地の崩壊により周辺住民の相当数に危害が生じる恐れのある場所、及びこれに隣接する土地で急傾斜地の崩壊を助長、または誘発する恐れのある土地で、次の基準に該当するものについては、都道府県知事は急傾斜地崩壊危険区域として指定できます。
(1)傾斜角度が30度以上のもの
(2)斜面の高さが5m以上のもの
(3)傾斜地の周りに人家が5戸以上あるもの
(4)5戸未満であっても官公署、学校、病院、旅館などがあり危害を生ずる恐れのあるもの
急傾斜地崩壊危険区域の指定に当たっては、都道府県知事は、関係市町村長の意見を聴いて指定し、これを官報に掲示し公示します。

3.急傾斜地崩壊危険区域の指定による制限には

急傾斜地崩壊危険区域が指定されると、区域内では土地利用の制限が行われます。
行われる制限とは次のような行為です。
(1)水を放流し、または停滞させる行為、その他水の浸透を助長する行為
(2)ため池、用水路その他の急傾斜地崩壊防止のための施設以外の施設または工作物の設置、改造
(3)立木竹の伐採、土石の採集または集積、木竹の滑下または地引による搬出
(4)掘削、のり切り、切土、盛土
これらの行為を行おうとする区域内の所有者等は、都道府県知事の許可が必要です。
ただし、区域内での農作業などの軽微な行為はこの限りではありません。

4.崩壊防止工事の勧告とは

急傾斜地崩壊危険区域に指定されると、危険区域内に土地を所有する所有者等は急傾斜地の崩壊が生じないように必要な処置を講じなければなりません。
都道府県知事は、危険区域内での崩壊防止工事が行れないときまたは工事がきわめて不完全な場合は、崩壊防止工事の施行または再施工を命じることができます。
崩壊防止工事には、多額の費用と高度の技術力が必要なために所有者等が崩壊防止工事を施工することが困難と認めるときは、都道府県または市町村が工事を施工します。

まとめ

急傾斜地法について簡単に解説しました。
私たちの身の回りには、急傾斜地崩壊危険区域に指定されてもおかしくないような危険な箇所が数多く散見されます。
急傾斜崩壊危険区域に指定されると行為の制限が行われるとともに、崩壊防止のための勧告が行われることは理解しておきましょう。