海岸法

海岸法とはなにか

海岸法と聞いて、いったい何を想像しますか?
おそらく高潮や津波に関係する法律と想像した方も多いことでしょう。
海からは少しは離れて暮らしているので、海岸法には該当しないだろうと考えている方!
実はそうではありません。
海岸法は、海の部分だけでなく海岸から一定の距離の地域に暮らしている方にも影響のある法律です。
また、海岸法は不動産売買契約においても大きな意味を成します。
今回は、海岸法について解説します。

1.そもそも海岸法とは?

海岸法とは、津波、高潮、波浪などの災害から国土を守ることを目的とし、海岸の管理や工事などについ て定められた法律で、1956年(昭和31年)に制定されました。
海岸法では、都道府県知事は津波、高潮、波浪その他、海水および地盤の変動による被害から海岸を 防護するために、海岸保全施設の設置などの管理を行う区域を「海岸保全区域」として指定できます。
海岸保全施設には、堤防、離岸堤、人工リーフ、突堤、消波工、ヘッドランド、水門などがありますが、管理については市町村長が管理する場合もあります。

2.海岸法の改正

海岸法が制定された頃の海岸は、人々が暮らしていくという観点から台風や地震による高潮や津波を防護することを重点に整備が行われてきました。
しかし、海と陸が接する海岸は、多種多様な生物が生息する環境空間でもあります。
また、近年は、環境保全の意識の高まりとともに海岸利用方法にも変化が見られるようになりました。
このように、海岸は、総合的な視点に立った管理を行うために、旧海岸法の目的である「海岸の防護」に「海岸環境の保全と整備」、「公衆の海岸の適正な利用の確保」を加えた法改正が行われてきました。

3.海岸保全区域

海岸法では、海岸管理者が海岸保全区域を指定しますが、このエリア内では海岸の防護、海岸環境の整備と保全を目的にさまざまな行為が制限されています。

3-1.海岸保全区域の範囲

海岸保全区域の範囲は、陸側では満潮時の水際線から50m以内、海側は干潮時の水際線から50m以内の範囲で指定されます。

3-2.行為の制限

海岸保全区域内で、下記の行為を行うとする者は、海岸法第8条の規定に基づき海岸管理者の許可を受けなければならないとされています。ただし、政令(施行令第3条)に規定される公共工事などは許可対象外です。
1)土石を採取すること
2)水面または公共海岸の土地以外の土地において、他の施設など新設し、または改築すること
3)土地の掘削、盛土、切土その他政令で定める行為

4.海岸保全区域かどうか分からない場合は

お住いの地域や売買の対象となる不動産が、海岸保全区域内かどうか分からない場合はインターネットでも検索して調べられます。
たとえば、GoogleやYahooで、調べたい地域「〇〇県、海岸保全区域」と検索するとどのエリアが保全区域に指定されているかが分かります。
また、自治体の公式ページには、海岸保全区域の位置や工事等の許可を得るための申請方法などが掲載されていますので参考にするといいでしょう。
もし、売買の対象となる不動産が保全区域内に該当する場合は、不動産の重要事項説明書の対象ですから、売買においては注意が必要です。
売買契約においては、仲介役の不動産業者(宅建士)が重要事項の説明を行います。

まとめ

海岸法について、簡単に説明しましたがお分かりいただけましたか。
不動産の重要説明事項には、都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限において、「海岸法」という項目があります。
どのような不動産が海岸法の対象になり、どのような制限を受けるかは不動産売買時の大切な問題ですから、海岸法についてよく理解しておきましょう。